
アサギマダラって何?(アサギマダラの郷 津市美杉町)
アサギマダラとは・・・蝶です!
あまり人を恐れずヒラヒラと優雅に舞う姿、なによりそのロマンに満ちた一生が魅力的な蝶、それが「アサギマダラ」です

美杉町でアサギマダラを見よう
アサギマダラの不思議な一生
アサギマダラは、住む場所を変えながら長距離の移動「渡り」をすることで知られています。季節の移り変わりに伴う気温の変化によって過ごす土地を変えているようで、秋には北海道から本州を南下し九州や沖縄へ向かう場合や、個体によっては日本を離れ遠く南西諸島や東南アジア、はたまた中国大陸まで飛ぶこともあるそうです。
その名は、羽に浮かぶ浅葱(あさぎ)色の模様から由来しています。比較的大きな蝶で、あまり人を恐れずゆっくりと羽ばたく様子と美しい羽根で人気があります。
アサギマダラはたびたびテレビなどでも取り上げられており、その不思議な生態が注目され一気に有名になりました。全国的にもアサギマダラのファンは多く、それゆえ広いネットワークによる長年のマーキング調査が行われており、「渡り」についても徐々に飛行ルートや時期などがわかってきています。また、好む植物も知られており、主にキク科で特定の有毒成分を持つ花の蜜を吸うために集まります。その理由として、体に毒をためておくことで鳥などに食べられる危険性を下げるためであるとか、雄のアサギマダラが有毒成分からフェロモンを作って雌にアピールしているなどの説があります。アサギマダラの雌雄は、その羽の模様で見分けることができ、後翅の下部に黒い模様があると雄(オス)、ないのが雌(メス)です。確かに、キク科の花で蜜を吸うのを観察するとほぼ雄しか見かけません。
「渡り」の注目すべき点はその距離だけではありません。通説で、アサギマダラの寿命は幼虫の期間も含めて4~5か月程度、成虫は2週間前後で死んでしまうと考えられています。つまり春に本州を北上する蝶と、秋に南下する蝶は別なのです。これも調査によって明らかにされてきていますが、季節に合わせて長距離を移動し、寿命が来る前に繁殖して次の世代を残します。次の世代は、生まれた季節により越冬に備えたり、「渡り」を引き継いだりします。遺伝子に記憶されていると考えざるをえないその生きざまに魅せられるのです。
ところで、余談になりますがアサギマダラを数えるとき、正式には1頭(とう)、2頭と数えるそうです。ただし近年では匹も間違いではないとされているとのことです。
アサギマダラが好む花、それはフジバカマ

フジバカマの花とアサギマダラ
アサギマダラの雄がキク科の蜜を吸うのは前述したとおりです。
そして、アサギマダラが主に夏から秋、そして初冬にかけて旅をする中で平地で蜜を吸うのが「フジバカマ」の花です。「フジバカマ」以外にも同属のヒヨドリバナなどがあります。
フジバカマは、キク科ヒヨドリバナ属の多年生植物で、秋の七草としても知られる花です。また紫式部の源氏物語や清少納言の枕草子にもその名が出てくることから、古くから日本で親しまれてきたことがうかがえます。
フジバカマの名の由来は、花の色が藤の花に似た紫色で、筒状の花びらが袴のようであることから名づけられたそうです。
可憐な花だけでなく、その香りもフジバカマの魅力です。生花の状態ではほぼ無臭ですが、花や葉、茎が乾燥すると内部の成分が変化して甘い香りを放つようになります。ドライフラワーにしても強い香りが長続きするため、匂い袋にも利用されています。
古来より愛されてきたフジバカマですが、近年園芸店やフラワーショップで見かけるのは品種改良された園芸品種です。もともとの原種よりも一回り小さく育てやすく改良されていますが、その香りは健在でアサギマダラも集まります。原種とされるフジバカマは人の背丈を超えるほどに成長し、花の咲きぶりもワイルドで大きめです。また、花の時期が園芸品種よりも早く、気候条件さえ揃えば早い時期からアサギマダラが飛来します。
多年草のフジバカマですが、大規模に育成するには手間がかかります。自然に繁殖する分には、地下茎でどんどん株が増えていきますが、花畑として決まった土地でたくさんの株を育成すると問題が起きます。アサギマダラの飛来地としてフジバカマ畑に取り組む人の間でときおり話題となる連作障害です。同じ場所に何年も続けて育てると、大きく育たない、花が少ない、花が咲かない、ひどい場合は枯れてしまう。そんな話を耳にします。美杉町の多くの花畑でもそんな問題に悩みながら、毎年大切に育てられています。連作障害への対処として、少しづつ植える場所を変えるのが良いようです。
連作障害の理由はいろいろあるようですが、一説にはフジバカマもそうであるように毒性成分をもつ植物は、その成分を作り出すために土中から特定の栄養素を吸収する必要があり、株が少ないうちは吸収と自然界の供給のバランスが成り立つために問題がないが、多くの株が密集すると栄養素が枯渇してその土壌では育たなくなってしまうとのことです。そう考えると、自然のフジバカマが地下茎で次々と横に広がっていくのは、栄養素の枯渇していない土地を求めてのことなのかもしれません。
アサギマダラを見てみたい!
実際にアサギマダラを見るには、アサギマダラが飛んでくる所へ行くのがいい方法です。それならばアサギマダラの集まる花がたくさんある所へ行けばいいのです。
しかし、そんな場所は近くにない・・・・・
それなら自分たちでアサギマダラが飛んでくる場所を作ってみようという試みが美杉町の太郎生地区で始まったのが今から10年以上も前のお話。
まだまだよく知らない存在だったアサギマダラが来てくれるように、試行錯誤を繰り返しながら花畑を整備していきました。今では美杉町全域に広がったアサギマダラ飛来地の取り組みですが、そのきっかけとなったのが美杉町太郎生地区の有志の集まり「太郎生道里夢(たろうどりいむ)」なのです。
アサギマダラを見るためには、天候、気温、場所などの条件がありますが、美杉町のフジバカマ畑はいずれも場所としての条件をクリアしているため、花の咲く時期に天候の条件が揃えばアサギマダラを見ることができる確率は高まります。
近隣地域でも取り組みが盛んな美杉町には、遠方からもアサギマダラファンや調査をされている方々が訪れます。詳しい方々にお話を伺うと、アサギマダラは活動の活発さが気温によって左右されるため、気温状況を予測することで飛来する地域を予想したり、雨の日には花畑の近くの山林で木陰に身を潜めていることなど、興味深いお話をお聞きします。晴れた日の朝、山林から群れで花畑に飛んできて日中を花畑で過ごし、また夕方に山林へ帰っていく姿も見ることができるそうです。
不思議な生態や、ロマンを感じる「渡り」、そして美しい姿と人々の興味を引き付ける蝶「アサギマダラ」。津市美杉町で探してみてはいかがでしょうか。